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hana日記

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2009年 03月 29日

人に魅了される瞬間

「昨日、美術館でダライラマへの寄付を頼まれたけど
あんな殺人者になんでみんな寄付するんだ?」

これがJackの私への質問でした。
不思議で仕方がなくって聞いたみたい。

彼は中国メインランドの南部の出身。カナダに来てすぐでした。
彼の中国名が発音出来にくいためJackと名のってました。

お父さんは中国党幹部お付きの英語通訳。
お母さんはその州の警察署のトップ。いわゆる中国のエリートでした。

私たちはカナダの日系企業で一緒に働く同僚。
ただ、上司がいないとサボるし態度は傲岸不遜で我良しのかたまり。
でもなんとなく愛嬌もあったりして。手に負えない(苦笑)個性的な男だった。
ただ権力を握った経験が有る為か人を人とも思わない男だった。

私はおつきあいは一線を引いておりました。

チベット問題についても、中国共産党の大本営発表を基本に私に質問したようです。
「貴方はどうしてダライラマを殺人者だと思ったの?」これがゴングの音。
その日は仕事もスローペースだったので、Jackとわたしのチベット議論が始まったのでした。

これはもちろん英語でしたし、お互い第二言語だし全て論争を尽くせたとは思わないけど。
私たちを取り巻く同僚が少しずつコーヒーを買いに行くと言って席を空けたので。。。。。
たいへん激しかったんだと思います。あはは

まあ話し合ったけどお互い平行線でした。当然。
最後はお互いわかり合えないって事が分った。この点は重要でした。

お互いの間を隔てる大きな谷の存在をはっきり認識した訳です。
その事はたいへん良かった。お互いどういう人間かが浮き彫りになった。
ダイナミックな瞬間でした。

次の日の朝、あの傲慢なJackが
「中国には60を越す言語が有り、共産党の行う事は全てが正しいとは思わないが
国を統率する事はたいへんな事なんだ」としんみり話しかけて来た。

わたしはその彼の気持ちは理解出来たけど。。。。
「貴方は今は自分で学べる状況に居るんだから、もっと自分で調べてみたら」
と思った事は話した。前日激しく議論したので、彼の事をとても近くに感じた。

彼は当然自分の国への愛国心もある、
でももう自国に戻りたくないとも思ってる。

海外で住む華僑の人達の意識の底にこのような気持ちが有るかもしれないな
とその時実感しました。


人に魅了される瞬間_c0189085_1172019.jpg


わたしはチベット問題を目にするたびに、Jackの事を思う。
とんでもない男だったけど私は有る意味好きだったのかもしれない。
あの議論の次の日の朝の彼に、共感した。
あの傲慢な男が見せた弱さと迷いに魅了された。

でもその会話の後、彼はすぐ「ごうまんぶりぶりマイペース」に戻ってたけど。

その後私はその会社に勤めてる時に強盗に襲われて、いろいろあり退社。
彼はカナダの大学に編入し、新たに学びを始めたのでした。

やっぱり彼も私も波瀾万丈、一筋縄ではいかない状況を生きて行くのでした。

by norihana333 | 2009-03-29 11:23 | Canada


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