2010年 10月 01日
むか~し四国の山中、吉野川の上流の川沿いにある旅館に両親と私で泊まった事がありました。 その日はお盆。まっくらな山々を「なんだか別の生き物みたいだな」と畏敬の念を持ちながら 眺めてました。無意識でしたけどちょっと怖かったのです。 その山々には阿波忌部の末裔であろうと言われる「山の民」が先祖代々山林業に携わりながら 生活されてました。くねくね蛇行する細い道を上がり切った尾根の近くに建てられた集落。 その頃でもう無人化しているお家がかなりあったと思います。 ど~してこんな不便な山の上に住んでるんだろ?天狗さん? と素朴な疑問が浮かぶ程の孤立ぶりでした。 よく見てみるとモーター付きの貨車(?)が麓から家まで設置されている家もあり。 あぁこんな形で必要な品を持ち上げてるんだなと納得。平野生まれの私はその光景が珍しく 見いてしまいました。旅館でご飯を食べお風呂に入ったりしながら夜は更け両親は寝入り。 もう夜中。私はお部屋の端っこの板間に置かれた籐の椅子に座り山々をもう一度眺めてました。 定番の浴衣をもちろん着用して。 暗い街灯もない山、そこを蛍の様な小さな光がゆっくりゆっくり登って行きます。 くねくねと。何個も。はっと遠くの違う山を見るとそこにも小さな光たちが。。 凄く奇麗だった。なんだろう。 あぁお盆だ!遠くに住む家族が車に乗って実家に向けて運転しているんだ。 そう理解して部屋の電気を消し。ずっとその「蛇行しながら山の家に帰省していく光たち」 を見ていたのです。背景は真っ暗な空で暗い山々だったので、まるで空に登っていく光たち を見ているようでした。 今思えば家に帰って行く先祖霊が光の形見えていたのでしょうね。 家族の再会の喜びが山の上では展開されているんだろうな。 そんな喜びのお裾分けを頂き私も何とも言えない幸せな厳粛な気持ちとなった夜でした。 もう20年も前の思い出。でも鮮明に覚えてます。 あの山の環境に住むご老人たち。山を下りる人も多いしそこに留まる人も居られます。 手を忙しく心を忙しく、立ち働き、山の精霊みたいに生きる人たちがそこに住んでいるかも しれません。あの夜を時々思い出すのですが。同時に思うのがあの山の暗闇です。 本当にその頃は真っ暗だったのです。ビロードのような暗闇。 たいへん美しかった。目をつむると今もその凄みのある暗闇を思い出します。
by norihana333
| 2010-10-01 15:59
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